ラストアイドル・タイランド活動終了のお知らせ
8月24日夜、ラストアイドル・タイランド公式Facebookに投稿された告知に、タイ人ファンの間で激震が走りました。
LAST IDOL THAILAND ขอแจ้งให้ทราบว่า กลุ่มศิลปิน LAST IDOL THAILAND จะทำการปล่อย Single สุดท้ายในวันที่ 16 กันยายน…
LAST IDOL THAILANDさんの投稿 2023年8月24日木曜日
日本語に訳すと次のとおりです。
大事なお知らせ
アーティストグループ LAST IDOL THAILAND 活動終了について
LAST IDOL THAILAND社は、アーティストグループ LAST IDOL THAILAND が2023年9月16日に最後のシングルをリリースし、2023年11月19日をもって正式に全ての活動を終了することをお知らせいたします。
弊社はこの先、ファン、協力先、メディアおよび支援者の皆様が今後訪れる最後のシングルとイベントを、アーティスト LAST IDOL THAILAND が正式に活動を終了する前の最後の思い出として一緒に応援してくださることを願っています。
またその後については、メンバー全員は RABBIT MOON CORPORATION 所属アーティストとして移籍し、私共は彼女達の各人に合った新たな進路と活動における成長を全力で支援・奨励してまいります。
心より感謝いたします。またお会いしましょう。
LAST IDOL THAILAND / RABBIT MOON CORPORATION
LAST IDOL THAILAND Facebook
（2023年8月24日）
本家のラストアイドルに続き、唯一生き残っていたタイのラストアイドルも11月19日をもって解散するとの告知でした。
ファンのRabbit Moon批判
ラストアイドル・タイランドの所属事務所Rabbit Moon社がファンからの激しい批判に晒されたのは無理もないことでした。ラストアイドル・タイランドが4月にRabbit Moon社へ移籍して以来、グループの活動が目に見えて減り、オフィシャルからのSNSを通じた各種告知もおざなりとなり、ファンの不満が溜まっていたところにこんな告知をされては爆発するのももっともです。
ここで話を進める前に、ラストアイドル・タイランドの今までを軽く解説したいと思います。
ラストアイドル・タイランドの略歴
ラストアイドル・タイランドは2020年10月15日～11月15日が応募期間だったオーディションで暫定メンバー7人がまず選ばれました。
続けてサバイバル・オーディション番組『ラストアイドル・タイランド』が2021年6月6日～9月19日にタイのTV局CH7 HDで放送。
正式メンバー7人が決まりました。
のちに正式メンバー7人はプロテア、残りのオーディション番組出演者のうち辞退者1人を除く19人はサムデイ、エガオ、青空とTシャツ、星空シスターズの各ユニットのメンバーとなり、ラストアイドル・タイランドは26人でスタート。2021年11月28日にデビューイベントが開催されました。
【 LAST IDOL DEBUT STAGE 】 🙏🏻 ขอขอบคุณแฟน ๆ ทุกท่านที่ให้การสนับสนุนพวกเรา LAST IDOL THAILAND ทุกคน…
LAST IDOL THAILANDさんの投稿 2021年11月28日日曜日
デビューシングル『バンドワゴン』MVは同日に公開。ちょうど1年後の2022年11月28日には2ndシングル『青春continues』MVが公開されています。
なお当初の所属事務所は、いずれもメディア企業のT&B Media Global (Thailand)社、Search Entertainment社、Draconic社、M Pictures Entertainment社の4社が共同出資して設立した Last Idol (Thailand)社でした。
運営体制が変わる話がメンバーに伝わったのはメンバーの発言から推測するに、恐らくですが2022年12月中旬だったようです。マーンムックの話によれば何度か内容が変更になり、結局T&B Media Global (Thailand)社が傘下に新設する芸能事務所 Rabbit Moon社に2023年4月から全員で移籍することになりました。
その際に各メンバーに対して活動を継続する意向があるか聞き取りがあったようです。継続しない意向を示した5人がその後2023年7月に卒業することになります。
Rabbit Moon 移籍の理由
そもそもなぜラストアイドル・タイランドは運営体制を変更し、新事務所Rabbit Moon社に移籍しなければならなかったのでしょうか。理由の推定には、次のグラフが説得力があるかと思います。
CredenData（要会員登録） に掲載されたLast Idol (Thailand)社の決算収支グラフです。左が売上、右が純利益（純損失）ですが、同社は2020年5月の設立以来3年間赤字続きで、状況は悪化の一途だったことが見て取れます。コロナ禍の影響をまともに受けたうえ、タイでのJ-POPアイドル人気低下の時期とも重なってしまいました。私の推測ですが、出資4社は立て直しは困難と判断し、グループ解散の方向で意見が一致したのではないでしょうか。
商務省商業開発局がウェブ上で提供する法人データベースでLast Idol (Thailand)社の情報を見ると、役員欄と法的拘束力の及ぶ役員欄の最上部にT&B Media Global (Thailand)社のMethawin Angkatavanich氏（ニックネーム Win。以下Win氏と呼ぶ）の名が掲載されています（黄色い枠）。
Win氏はRabbit Moon社CEOその人です。Win氏がいわば「尻拭い」を買って出て、新事務所Rabbit Moon社を立ち上げ、CEOに就任したという流れなのでしょう。
つまりRabbit Moon社には「敗戦処理」が任されているのではないかと私は考えています。
4月の段階でラストアイドル・タイランドを解散させた方が傷口がさらに深くならずに済んだはずですが、そうしなかったのはきっと理由があるからです。その時点で解散させるとおそらく日本側との契約違反になったのではないでしょうか。私は「シングルを最低3曲リリースする」ことだったと推測しています。3rdシングルのリリースとグループの活動終了が同時に発表されたことが推測の根拠です。
それではメンバーはどの段階でグループが解散することを知ったのでしょうか。メンバーのマーイが3月20日のライブ配信でグループの今後について次のように語っています。
将来、グループはスタイルが変わりますよ。
今までと違くなるかもしれないって感じでね。
今までどおりかもしれないけど、私も確証がなくてわかりません。
この時点でグループ解散まで伝えられていたかは微妙ですが、少なくともグループに大きな変更があるとの話が既にされていたのが分かります。
Rabbit Moonに課された使命①
すでに述べたとおり、Rabbit Moon社の第１の使命はラストアイドル・タイランドを日本側との契約に問題がないかたちで解散させることなのではと私は考えています。
4社合意での決定事項なので、解散は既定路線でWin氏がどうこうできる話では既にないのだと思います。
だからこそ5月のタイフェスティバル以降、映画プレミア上映イベント以外にまともなイベントへの出演がほぼなくなり、メンバーのライブ配信予定告知でさえ、やる気がないかのごとくギリギリや始まった後で告知がある状態になったのでしょう。
（タイフェスティバル東京2023に出演したメンバー9人。2023年5月21日）
日本側についてWin氏は8月25日に自身のFacebookのコメント欄で次のように語っています。
私は日本へ飛び、AkimotoのCEOとLast idolの今後について交渉済みです。私共は、彼女達の刷新した新たな方向性が従来より良いものとなるとの結論に至りました。私はリニューアルを心待ちにしていただきたいと思っています。私共はこの新たなことに既に着手しています。
日本側とは既に契約関係がクリアになっていることが窺えます。
Rabbit Moonに課された使命②
日本側との契約がクリアになっても、まだ順守しなければならない契約が残っています。メンバーの雇用契約です。契約期間についてマーンムックが「BNK48と大差ない」と語っていたので、5-6年が妥当なところかと思います。残り2-3年でしょうか。
Rabbit Moon社はラストアイドル・タイランドのメンバーを引き受けたほかに、自社で4-5月にオーディションも実施しています。
😍รายงานตัวกันหน่อย มีใครอยู่ในรูปบ้าง ยกมือขึ้นน 🙌🏻 เสร็จสิ้นกันไปแล้วสำหรับ Live Audition 🫶🏻 ของผู้เข้ารอบทั้ง 200 คน…
Rabbit Moon Corpさんの投稿 2023年5月27日土曜日
Rabbit Moon社も利益を出さなければ意味がありません。オーディションで才能のある子を積極採用し、芸能事務所として本気で稼いでいく姿勢の表れでしょう。逆にそうしなければ、ラストアイドル・タイランドのメンバーらをあと数年雇い続けるのも厳しい状況に陥ってしまいます。
もしかするとオーディション採用組と「元」ラストアイドル・タイランドのメンバーの混成ユニットも11月19日以降誕生するかもしれません。
いずれにせよメンバーらを契約終了まで雇い続けることもRabbit Moon社の使命であるのは間違いないでしょう。
CEOのFacebook投稿
8月24日のファンを驚かせたグループ解散告知を引用してWin氏は翌日、Facebookに次の投稿をしました。
16กย นี้!! พบกับซิงเกิ้ลใหม่ของ Last idol Thailand กันนะครับ ซิงเกิ้ลนี้จะเป็นซิงเกิ้ลสุดท้ายของน้องๆทั้ง 21…
Methawin Angkatavanichさんの投稿 2023年8月24日木曜日
9月16日に!! Last idol Thailand のニューシングルを目の当たりにしましょうね。本シングルは全21人のメンバー達が Last idol Thailand 名義で出す最後のシングルとなります。さらにこれから3か月にわたり全開で実施される様々なアイドル・イベントでお会いするのをお待ちください。そして11月にイベントが終了した後、私共は Last idol Thailand 名義での活動を終了します。
その後は、新たな活動における彼女達一人一人の新たな活躍を今後も楽しみにしていてください。必ず楽しいものとなることを保証します!!
CEOにとっては解散がとっくに決まっていたラストアイドル・タイランドよりも解散後の彼女らの売り出しの方が大切なので、こういう文章になるのは理解できます。しかしラストアイドル・タイランドのファンらには解散は寝耳に水であり、Win氏がラストアイドル・タイランドにちっとも愛情がないことが透けて見えたこの文面で傷口に塩を塗られた気持ちになったようでSNSで炎上していました。
คุณวิน – เมธวิน อังคทะวานิช CEO Rabbit Moon Corporation Limited บริษัท Talent Management พัฒนาศิลปิน ‘คุณภาพ’…
Rabbit Moon Corpさんの投稿 2023年6月13日火曜日
上の写真の左の男性がWin氏です。
さらに同日に今後解散までの3か月間のスケジュールが告知されました。
กิจกรรมส่งท้าย.. ก่อนบายเธอ 👋🏻💙 มาร่วมกิจกรรมส่งท้ายกับพวกเราหน่อยน้าา… ก่อนที่จากกันไป…
LAST IDOL THAILANDさんの投稿 2023年8月24日木曜日
おそらく今後3か月間の活動は、解散後の新たな活動のプロモーションを兼ねているのだと私は推測しています。だからこそやおら予定告知に積極的になったのだと思われます。
本来ならファンに有益な情報ですが、3か月も先までのスケジュールを事前に告知することができるなら、なぜ今までそうしてこなかったのかと、これまた炎上の燃料となりました。
Win氏は今までイベント現場などでファンにほとんど接してこなかったのでしょう。ファン心理は確かに全然分かっていない気がします。アイドルのプロモーション方法の知識もないに等しい可能性が大です。
しかし批判を受けても感情的に反論せず、いつも冷静で温厚な姿勢でいるのは大したものです。数多くの会社のCEOを務める傍ら、この事務所のCEOを引き受けたことからも覚悟が感じられます。タイ人ファンには大不評ですが、私は密かにWin氏に期待しています。解散後の手腕を見てから評価しても遅くはないでしょう。
メンバーの心情
もっとアイドルをしていたかったとSNSに投稿したメンバーがいました。逆にアイドルではない路線を目指したいメンバーには今後に期待している子もいるかもしれません。そんな中、マーンムックが8月25日にインスタグラムに投稿した手書きの手紙が衝撃でした。
中ほどの引用符 ” ” の文には、
マーンムックはアイドルとしての活動を間もなく終わらせます。
と綴られています。11月19日のラストアイドル・タイランド活動終了をもって、マーンムックも自身のアイドル活動を終了させるとのことです。2017年に始まったJ-POPアイドル・ブーム以来アイドルを続けてきた彼女も今や29歳。それでももっと続けてほしかったですね。今後は俳優や司会をしていくのでしょう。
ところで雇用契約ですが、他のメンバーらと異なり、マーンムックだけ短期の契約だと本人が語っていました。前回更新が昨年11月だったそうです。もしかすると、11月19日にラストアイドル・タイランドがラストイベントをもって活動終了するのは、マーンムックの契約期間に合わせたのかもしれません。つまり彼女の契約期間は1年の可能性があります。
最後にサウノイが8月26日にインスタグラムに投稿した動画をご紹介します。
本人がカバーして歌った歌をBGMにグループの思い出の場面が走馬灯のように流れていきます。メンバー全員への愛が感じられます。他のメンバーも同じ思いなのでしょう。多くのメンバーがインスタグラム・ストーリーズにこの動画を投稿していました。ファンにも涙した人が多いに違いありません。
グループの解散をずっと前から既定路線で動いていたオフィシャルと、予感はあったものの寝耳に水だったファンとの温度差が生んだオフィシャル不信は尾を引きそうですが、こうやって一歩引いて経緯を俯瞰してみると解散は避けられなかったのかなと多少は冷静になれる気がします。
あとはやはりメンバーはいつから解散になることを知っていたのか。具体的に11月19日で解散と知ったのはいつだったのか、です。きっとそのうち誰かが語ってくれることでしょう。
