CGM48の人気が10月中旬から急上昇しています。新型コロナの影響で休止していたイベント出演とメディア露出を再開したことに加え、2ndシングル『メロンジュース』が初披露されたことがきっかけです。
2ndシングル『メロンジュース』の予約注文が9月30日~11月9日の間受け付けられ、最終的に売上枚数が3万枚を突破しました。この数字は2017年9月27日~11月9日という3年前のまさに同時期に予約注文受付のあったBNK48 2ndシングル『恋するフォーチュンクッキー』の売上枚数3万枚とほぼ同数かそれを若干上回る上々の数字です。
さらにメンバーが育てたメロンに直筆感謝メッセージカードと生写真をセットにした「メロン・ボックスセット」が5分程度で売り切れ。エスニック風布バッグも12時間で売り切れとグッズ販売も絶好調です。
しかし一つ不思議な現象があります。
2ndシングル『メロンジュース』のMV再生回数がなかなか増えないのです。
(CGM48 2ndシングル『メロンジュース』MV)
10月31日に公開されてから13日が経過した11月13日17:00時点で、再生回数は33万回あまり。この数字をBNK48とCGM48の歴代MVの100万回再生到達時間と比較してみましょう。
- 『ドートディドン』(8thシングルカップリング)2020年1月15日公開:10時間10分
- 『RIVER』(1stアルバム)2018年5月1日公開:13時間40分
- 『君はメロディー』(4thシングル)2018年9月16日公開:16時間30分
- 『BEGINNER』(6thシングル)2019年3月3日公開:18時間
- 『ハイテンション』(8thシングル)2020年2月23日公開:25時間
- 『ジャーバージャ』(2ndアルバム)2019年7月5日公開:26時間10分
- 『君のことが好きだから』(6thシングルカップリング)2019年3月26日公開:26時間20分
- 『ジャークジャイ・プーサーウ・コンニー』(8thシングルカップリング)2020年1月27日公開:27時間30分
- 『ヘビーローテーション』(9thシングル)2020年7月26日公開:27時間59分
- 『BNK Festival』(5thシングル)2018年11月22日公開:28時間3分
- 『LYRA』(LYRA)2020年10月7日公開:29時間17分
- 『77の素敵な街へ』(7thシングル)2019年10月30日公開:2日21時間20分
- 『あなたとクリスマスイブ』(3rdシングルカップリング)2018年2月26日公開:3日11時間
- 『Reborn』(2ndアルバム収録曲)2019年8月10日公開:4日19時間45分
- 『初日』(3rdシングル)2018年4月10日公開:4日20時間30分
- 『Chiang Mai 106』(CGM48 1stシングル)2020年2月9日公開:5日0時間30分
- 『恋するフォーチュンクッキー』(2ndシングル)2017年11月18日公開:6日16時間
- 『キャンディー』(Mimigumo)2019年10月5日公開:97日
- 『Myujikkii』(Mimigumo)2019年11月29日公開:168日11時間
CGM48 1stシングル『Chiang Mai 106』よりもずっと遅く、このままのペースで行くと100万回再生達成に40日以上かかり、BNK48のユニット「Mimigumo」の一連の曲や、まだ100万回に到達していないBNK48 9thシングルのカップリング『走れ!ペンギン』と『ウインクは3回』よりは速いという結果となりそうです。
遅い理由はBNK48よりファンが少ないことや新型コロナの影響ももちろんありますが、それだけでは説明できません。なぜなら少し前の10月7日にMVが公開されたLYRAの『LYRA』が遅かったと言われながらも29時間17分で達成しているからです。CGM48とLYRAでファン人口が何十倍も違うということは考えられないのです。むしろ同程度かCGM48ファンのほうが多いかもしれません。と言うのも、
公式ツイッターのフォロワー数でCGM48はLYRAの1.7倍となっているからです。インスタグラムのフォロワー数でもCGM48が9.8万に対してLYRAは4.6万にとどまっています。
ということは『メロンジュース』MV再生回数が増えない理由はファン人口ではなくファン層の違いにありそうに思えます。ここでその理解の前提のためにタイで人気の音楽ジャンルの変遷を振り返りながら説明します。
K-POP人気
タイでは2000年前後の時期にJ-POPや日本のTVドラマが人気だった時期がありました。滝沢秀明や広末涼子、深田恭子らがタイで人気を博していましたが、その後はK-POPの独断場となります。
とくに2009~2014年は東方神起、SJ、SHINee、2PM、2AM、Big Bang、少女時代、WG、Kara、2NE1といったタイでK-POP第2世代と言われるグループや第2.5世代と言われるEXOが活躍した時期で、さらにTVドラマでも『宮廷女官チャングムの誓い』が大人気となって、タイの一般市民の間にもK-POPブームが席巻しました。当時はK-POP一色と言っても良く、タイの音楽業界は瀕死の状態となっていました。
เก็บตก EXO-L แห่ต้อนรับ EXO แน่นสุวรรณภูมิ-พารากอนhttp://t.co/1V0z9qTE9D #ไทยรัฐ pic.twitter.com/sOWKMJlKN6
— Thairath_Ent (@Thairath_Ent) September 12, 2014
この頃のK-POP人気の主役は女子中高生でした。K-POPアイドルが来タイすると一目見ようと空港へ大挙して押し寄せて塀に登ったり床に座り込んだりし、ショッピングセンター内でイベントがあれば館内を大群で走り回ったりと、周囲が目に入らなくなった熱狂ぶりがニュースになり社会問題化されるほどの現象を生んだのです。
そういうK-POPファンの女子中高生らを呼ぶ「ティン・ガウリー」という語まで生まれました。「韓国の耳たぶ」という意味で、耳たぶは女子中学生の耳たぶまでの髪の長さのおかっぱの髪型を指しています。つまり「K-POPに熱狂しすぎて周囲が見えなくなった子供っぽいファン」というネガティブな意味が込められています。
BNK48ブーム
そんなK-POPブームの熱狂した絶頂期を過ぎた2017年12月~2018年1月、BNK48の2ndシングル『恋するフォーチュンクッキー』が有名芸能人の踊ってみた動画投稿ブームがもとで人気に火が付きました。
นี่คือบางส่วนจากเบื้องหลังการถ่ายเอ็มวี #คุกกี้เสี่ยงทาย #BNK48 สดใสมาก ๆ ติดตามชมแบบเต็ม ๆ เร็ว ๆ นี้ ที่ https://t.co/K508IPbhAF pic.twitter.com/XfNj8WbcpT
— intrend บันเทิง (@IntrendBunTueng) November 4, 2017
瞬く間に一般市民の間でもブームとなり、『RIVER』がリリースされた5月にピークを迎えます。
K-POPファンで元祖「耳たぶ」世代だった女性達も例外ではなく、大勢がこの時期にBNK48ファンに流入しました。流入すると同時にK-POPファンのやり方や用語をBNK48ファンの間に普及させます。
K-POPファンとYouTube再生回数至上主義
(出典:BNK48公式Facebook)
K-POPからBNK48ファンに流入した元祖耳たぶ世代の女性達が持ち込んだやり方の一つが「YouTube再生回数至上主義」でした。K-POPの本場韓国では人気を測る指標としてCD売上枚数ではなくYouTubeでのMV再生回数が重視されていると聞きます。元祖耳たぶ世代の女性達は長年の経験からYouTubeで弾かれずにしっかりとカウントされる再生回数の回し方を心得ていて、BNK48の新曲MVが公開されると「YouTube再生回数の正しい回し方」の指南リストをBNK48の各ファングループのLINEグループやLINEオープンチャットで流していました。元々熱心な彼女達はファングループの中心メンバーとなり、中には新たなファングループを立ち上げる人達も出ていました。
つまりBNK48が『RIVER』以降のMVで100万回到達が急に速くなった背景には、K-POPから流入した元祖耳たぶ世代の女性ファン達の大きな貢献があったのではないかと筆者は見ています。
CGM48のファン層とYouTube再生回数
(出典:CGM48公式Facebook)
2020年2月9日、CGM48が1stシングル『Chiang Mai 106』でデビューし、その日のうちにMVが公開されました。CGM48メンバーは既に前年12月からライブ配信を開始していて、各メンバーのキャラもある程度伝わっていました。Fortune、Nenie、MeenがK-POP命であるのを筆頭に、多くのメンバーがK-POP好きであることも知られるようになりました。K-POPに興味がないかあまり興味がないのはMarmink、Kaning、Sita、Fahsaiぐらいです。
そんなことも背景にあったのかもしれません。『Chiang Mai 106』MVが5日0時間30分で100万回再生を達成できたのはK-POPの元祖耳たぶ世代の女性達の協力があったからのように思います。
しかしK-POPブームから6~11年経ち、当時中学生だった彼女達も既に大学生や社会人に成長しています。FortuneやMarminkでさえ21歳、多くは十代前半~半ばのCGM48に憧れるのは難しい年齢になっていました。さらにCGM48はBNK48よりも日本の48グループ路線堅持を強く打ち出していて、グループのカラーとしてK-POP性は望めません。
CGM48の現在のファン層は男性だと10~30代にまんべんなくいますが、女性は10代の中高生が大半の印象です。この層にももちろんK-POPファンを兼ねている人達はいますが、年代のギャップのためか元祖耳たぶ世代との接点はないようで、YouTube再生回数の回し方などの技が伝わっているように見えません。
(出典:CGM48公式Facebook)
『メロンジュース』MV公開からしばらくの間、筆者はCGM48トップメンバー2人のファングループのLINEオープンチャットをチェックしていました。グループ中心メンバーはYouTubeの再生回数を回してくださいとはお願いするのですが、正しい回し方指南の投稿は結局一度も目にしませんでした。1人のLINEオープンチャットでファンの1人が「僕はこうやっているけど正しいやり方か分からない」と投稿していたのを見かけただけだったのです。
さらにファン層の気質の違いも影響していそうです。元祖耳たぶ世代の女性達はツイッターで応援しているメンバーのハッシュタグの付いたツイートをせっせとRTして、メンバーをベタ褒めするツイートを連投する傾向があります。人気を上げようととにかく熱心です。CGM48ファン層はというと、そういったメンバーやグループ人気への貢献に身を投じるのではなく、対メンバーのツイートをしている人が多いのが特徴だと感じています。CGM48メンバーのほとんどはツイッターをマメにチェックしています。そうしたメンバーに読んでもらうための内容をツイートする傾向が強くあります。
CGM48ファン層は団結心はあるのですが、熱心に再生回数を回したりRTしまくるという活動にはあまり興味がなく、SNSを通して一方的ではあるもののメンバーとの一対一の擬似関係を牧歌的にまったりと楽しんでいるのが特徴です。
LYRAとYouTube再生回数
(出典:LYRA公式Facebook)
そういう状況下で『メロンジュース』MV公開前にBNK48の6人のメンバーによるユニット「LYRA」が登場したというわけです。まさにK-POPな路線のLYRAに、BNK48に流入していた元祖耳たぶ世代の女性達が入れ込んだのは当然ともいえます。年齢的にも同世代のメンバーがいるので憧れの対象となりえます。デビュー曲『LYRA』のMV再生回数を回し、100万回再生が遅いと批判されると、躍起になって100万回再生よりもずっと速いスピードで100万回から200万回までの再生をやってのけ、500万回再生までその勢いを続けました。
ツイッターのトレンド入りもK-POP界隈では重要視されるようで、MV再生回数とあわせてツイッターの「タイのトレンド」入りでも頑張っていました。
『メロンジュース』MV再生回数はさほど気にする必要がないのかも
(出典:『メロンジュース』MV)
したがって『メロンジュース』MV再生回数は、自然な数字にかなり近いと言って良さそうです。増加数を監視していても再生回数を回している人が何百人もいるとはとても思えません。ファン層が少ないわけではなく、再生回数を重視していないことの表れなので、100万回達成が遅くても気にする必要はないという結論で良いのではないでしょうか。そんなことよりもメンバーとの一対一のつながりを楽しみましょうという声に聞こえる気がします。
筆者の考察が正しいかどうかは、CGM48の今後の人気と活躍が証明することでしょう。CGM48劇場がオープンすれば胸を張って正しかったと言えそうです。