タイでは近年、時の政権に反対する団体がデモ行進や道路・政府施設の占拠を行う出来事が何度も起きてきました。




2008年にはサマック政権・ソムチャーイ政権に反対した黄シャツ派(民主市民連合)が首相府やスワンナプーム空港を占拠。


(2008年10月 BTSプロムポン駅下でデモ行進をする黄シャツ派)

 

2009~10年にはアピシット政権に反対する赤シャツ派(反独裁民主戦線)が首相府を包囲、バンコク中心部交差点封鎖などを行い、10年5月19日には強制排除の際に犯人には諸説ありますがセントラルワールドの一部が放火され焼け落ちています。


(2009年8月17日 王宮前広場で集会を開く赤シャツ派)




2013~14年にはインラック政権に反対したPDRC(民主党人民民主改革委員会)が頻繁にデモ行進を行ってバンコクの主要道路を占拠。


(2014年3月29日 パヤタイ通りをデモ行進するPDRC)

 

そして今また現政権・王室のあり方に反対する活動が活発化してきています。今回は学生が中心の活動とされ、8月10日にはタマサート大学で集会を開催。「王制の問題解決要求10項目」などを発表しました。

 

16日には民主記念塔前でここ6年間で最大規模の集会を開き、政府に対して「国民を脅すことを止めること」「新憲法の起草」「国会の解散」の3項目を要求しました。


 

今回の活動は筆者の不勉強のせいかもしれませんが、かつてのデモと異なり活動の主体がはっきりしないのが特徴に見えます。参加者の多くは学生とのことですが果たして他の勢力の後押しなしなのかが見えてきません。自分達のことを「解放市民」(ประชาชนปลดเเอก)と呼んでいるようです。

しかしSNSでは非常に盛り上がっています。現政権擁護派はサリム(สลิ่ม)と呼ばれています。黄シャツ派の流れを汲む人達がその後ピンクや緑などシャツの色を変えたことからカラフルなタイ・スイーツ「サーリム」(ซ่าหริ่ม 画像検索)を文字って呼んだのが由来ですが、SNS上では少し前からこのサリム叩きが激しく行われていました。

そして流れは芸能人や著名人に対して解放市民側についていることを「Call out」(表明)することを迫る方向へ向かいました。

BNK48も例外ではありません。自ら活動に共鳴してか仕方なくか判別がつきにくいメンバーが多いものの、今までに筆者の気付いた限りでは、Faii, Jennis, Kheng, Cherprang, Orn, Music, Namneung, Namsai, Wee, Khamin, Myyu, Ratah, Stangらが解放市民側であると受け取れる投稿をSNSに行っています。

とくにJennisは8月16日、インスタグラム・ストーリーに次の画像を投稿しました。

これは8月10日のタマサート大学での集会で出された10項目の要求をまとめたものです。

さらに同じ日に行ったライブ配信でも学生側につくことを表明して、仕事に影響があれば自分だけが責任を取る旨の発言も。そのことは翌日にニュースにもなりました。

Jennisは今までも相手がファンでも運営でも誰であろうとはっきりとした物言いをするキャラだったので予想した人も多かったと思います。




またFaiiとKhengの2期生2人も積極派です。Faiiは何度もインスタグラム・ストーリーで発言。Khengはなんと集会のあった民主記念塔の写真を投稿し、大多数の人は集会に参加したと受け取ったようです。

 

これらの「表明」を受けて、8月18日のインスタグラムのフォロワー数増加とFacebookのいいね!増加ランキングが興味深い結果となっています。

Junéは現在、GDHのドラマ『バッド・ジーニアス』で主役のリン役を演じていることから別格の増加数となっていますが、それ以外の上位にランクインしたメンバーはほぼ全て「表明」をしたメンバーばかりとなっています。アイドルファンではない層に注目された結果だと思われます。

とくにFaiiとKhengはかつて人気下位グループにいました。例えば2019年12月6日のインスタグラムのランキングではかなり下の方です。

 

「表明」の威力は大きいですね。

 

しかしです。そもそもBNK48メンバーは政治的発言をして良いのでしょうか。BNK48メンバーのアーティスト・マネージメント契約には次のような内容があると囁かれています。

「アーティストの義務および責任」の項目に、所属アーティストは表現・イメージ・価値の維持のために以下のことを厳格に遂行することに同意する、として、

政治、統治、国政、政党、政党党首、政治家、政府担当官に関して関与し、または意見を表明しない。ただし所属先が政府からの協力要請を受け、所属先が事案ごとに通知する政府の業務に関して必要な事案である場合を除く。

という項目があるようなのです。

 

したがって匂わせる程度なら大丈夫でしょうが、Jennis, Faii, Khengは厳格に適用すれば違反のようにも見えます。

ところがBNK48運営はBNK48メンバーをプラユット首相に面会させたことから多くの人から「サリム」だと目されてきました。しかし今、運営が処罰に動かないことを称賛する声が起きています。この状況下で処罰すればいまだかつてない大炎上必至なのでさすがに見て見ぬふりをするしかないものと思われます。

 

BNK48メンバーまで巻き込まれた今回の政治運動が今後どこまで行くのか。そしてBNK48メンバーもどこまで関わっていくのか。心配しながら注視していく必要がありそうです。